共用部分の瑕疵が原因で漏水、しかし、管理組合に損害賠償請求出来ない?!

その他,マンションの判例,管理組合関連

「保存の瑕疵」により、自宅住戸が漏水被害。損害の賠償は他の区分所有者にしないとダメ!

裁判記録によれば原告は東京都内のマンション区分所有者。

築20年経過したころ、上階住戸が専有部分のリフォーム工事を実施。5年後に天井から漏水事故が発生した。

管理組合が漏水推定箇所を補修したが翌年、再び漏水が発生。同様に別の場所を補修したが、その半年後には3回目の漏水が起きた。さらに翌年、4回目の漏水が。

今度は上階のバルコニーに設置された給湯管配管を覆う庇を設置、壁面に防水材を散布するなどの対応を取ったところ漏水は沈静化。以後は発生していない。

被害にあった区分所有者は2019年、「漏水はリフォーム工事」が原因などとし、上階住戸の区分所有者、また、管理組合に補修費用や資産価値下落分、慰謝料等1400万円を連帯して支払うよう求めるなどの訴えを東京地裁に起こした。

22年12月27日の判決では原告側が一部勝訴。区分所有者に38万円、管理組合に約1010万円を支払うよう命じた。

一審判決後、原告、被告双方が控訴。控訴審判決が昨年9月東京高裁で言い渡された。控訴審判決では相手方区分所有者には持ち分に応じた賠償を命じたが、管理組合に対する請求は棄却した。

木納裁判長は、一審同様躯体部分に「保存の瑕疵」があるとし、区分所有者全員が原告に対しl「民法717条1項本文に基づく損害賠償債務を不真正連帯債務として負う」と認定した。ただ、管理組合への請求については、「共用部分の占有者は管理組合ではなく区分所有者全員」であり、区分所有者全員との関係で管理組合が共用部分の管理を行う責任があるとしても「直ちに、占有者として、これに基づく損害賠償債務を負うものではない」とした。

マンション管理新聞1277号より、抜粋

私見:時間のある方は、是非、一審判決の理由を読んでいただきたいのが控訴審判決がもし、上告審で支持されるようなことがあれば本件被害者は救われないのである。区分所有者全員を被告にして訴えるなど現実的でない。漏水事故は、毎年のようにマンション内で発生し、その原因が共用部分の瑕疵にあたる場合は日常茶飯事である。細かい原因はケースごとに異なると思うが管理組合が損害賠償請求の相手方から外れる場合、被害者はどうすればよいのだろうか。一審判決で管理組合への損害賠償を認めた理由の中に「管理組合の目的には共用部分の維持・修繕だけでなく「権利関係が複雑化することを防ぐべく、共用部分の使用により生じる権利義務関係の処理を管理組合に一本化することがあると考えられる。」とした一審判決を支持したい。