滞納者に弁護士費用は請求できる?!
当事者
○○○市○○○区○○○1丁目6番5号
原 告 X1マンション○○○管理組合
代表理事長 X2
上訴訟代理人弁護士 * 部 * 昭
同所X1マンション○○○905号
被 告 Y
上訴訟代理人弁護士 * 浦 **
上訴訟復代理人弁護士 * 比 * 平
主 文
一 被告は、原告に対し、金24万1,878円及び別紙請求金一覧表(一)記載の各金員に対する支払滞納日欄記載の日から、別紙請求金一覧表(二)記載の各金員に対する支払日欄記載の日から各支払いずみまでそれぞれ年18.25パーセントの割合による金員を支払え。
二 被告は、原告に対し、金8万円及びこれに対する平成6年8月4日から支払いずみまで年5分の割合による金員を支払え。
三 訴訟費用は被告の負担とする。
四 この判決は、1項、2項に限り仮に執行することができる。
事実及び理由
第一 請求の趣旨
主文と同旨
第二 事案の概要
一 請求原因の要旨
1 原告は、○○○市○○○区○○1丁目6番5号に所在する区分所有建物「X1マンション○○○」(以下本件マンションという)の区分所有者員で構成する管理組合で、区分所有者全員から本件マンションの建物共用部分、敷地及び附属施設の管理を委任され、区分所有者全員のための管理組合規約に定める管理費、修繕積立金等の収納、出納業務を行っている。
2 彼告は、本件マンション905号室を所有している区分所有者であり、次のとおり管理組合規約に定める共用部分等の維持管理に要する管理費、積立金等を支払うこととなっている。
一 旧規約
毎月末日までに翌月分
滞納損害金 日歩5銭
二 改正規約(平成5年10月3日)
被告の管理費等月額金1万528円を平成5年12月分から月割金1万490円と定め、毎月28日までに翌月分を支払う。
延滞損害金 日歩5銭(年率18.25パーセント)
3 被告は、別紙一覧表(一)及び同(二)記載の管理費・積立金を支払わない。
4 なお、管理組合規約には、「区分所有者が管理費、修繕積立金、使用料等の本条に定める費用の支払いを3カ月以上滞納した場合は、管理組合は、所定の法的手続きを弁護士又は、司法書士に依頼して行うことができる。その場合の弁護士又は司法書士に対する相当報酬及びそれに関する一切の諸経費は、当該滞納者の負担とする」、使用細則(提訴時の費用)には、「前項の場合、組合員は解決のために要した弁護士費用延滞利子その他諸経費の実費一切を負担するものとする。」ことと定められている。
よって、原告は被告に対し、請求の趣旨1項記載のとおり管理費及び修繕積立金と約定遅延損害金と同2項記載のとおり提訴時の費用負担条項及び不法行為による損害賠償請求権に基づく弁護士費用及び延滞利子の支払いを求める。
二 争点
1 権利の濫用
管理組合の役員は、組合員の利益のために、管理規約並びに使用細則が遵守されるように誠実に職務を遂行する義務を有している。
ところが、原告役員らは、組合決議及び組合員の進言にもかかわらず、当該マンション共用部分及び専用部分に違法に設置されている掲示板、看板、広告等の撤去を要求せず、また、共用部分である階段の踊り場などに自転車などが放置されて、組合員の通行が妨害されているのに何らの措置もとらない。管理費用は、これらの対策等に使用されなければならないにもかかわらず、これらの対策を放置したまま管理費用のみを請求するのは権利の濫用として許されない。
2 弁護士費用
第三 争点に対する判断
1 証拠並びに弁論の全趣旨によれば、原告主張の請求原因2の事実、また、被告主張のとおり本件マンションの共用部分である廊下・踊り場等にバイク・自転車などが置かれていることが認められる。
なお、原告管理組合は、共用部分の保守、保安、保全等の執行を業務としているところ、管理組合規約35条によれば、管理組合役員が、法律・規約及び総会の決議を遵守し、組合のために忠実な職務の執行をすべきことを義務づけている。一方組合員は、同規約42条に基づき総会招集権を有し、同規約46条9号により役員解任を決議事項とすることもできることとなっている。
これは、役員が上忠実義務を怠れば、上総会招集において役員解任手続きで対処するということを意味しているのであり、被告の主張は、この自治的方法で解決すべきである。管理費支払業務は、規約上も公平上の観点からも忠実業務に対向できるものということはできない。
以上によれば、原告の本件請求が権利の濫用であるという被告の主張は失当と言わねばならない。
2 弁護士費用について
証拠(管理組合規約・使用細則)によれば、弁護士費用等について、原告主張のとおり、当該滞納者の負担とすることが定められていることが認められる。してみれば、不法行為による損害賠償請求権について判断するまでもなく組合員である被告は、弁論の全趣旨によって認められる弁護士費用金8万円と法定利息の支払義務がある。
小倉簡易裁判所
裁判官 黒 木 勲 マン管センター判例データベースより、引用
私見:私の顧問先マンションでも管理費等の長期滞納から少額訴訟、支払い督促、通常訴訟の類が増加している。悪質なケースもあれば組合員である滞納者が高齢で意図せず長期入院になってしまい管理費等の引き落とし口座が引き落とし額に満たなくなってしまった場合や他界され相続人が決まらず宙に浮いた状態である場合、中には組合員が行方不明等もある。そのつけが管理組合に回ってきて回収に生じる費用を組合員の共有財産である管理組合の予算から支出するとなると合点がいかない人もいるだろう。標準管理規約の中にも本件判決理由となった管理規約の中の定め(区分所有者が管理費、修繕積立金、使用料等の本条に定める費用の支払いを3カ月以上滞納した場合は、管理組合は、所定の法的手続きを弁護士又は、司法書士に依頼して行うことができる。その場合の弁護士又は司法書士に対する相当報酬及びそれに関する一切の諸経費は、当該滞納者の負担とする。)と類似した定めが設けられており、滞納者に請求できるようになっている。衡平の原則からいっても妥当な判決だろう。