議長交代動議は有効!!

マンションの判例

判決

総会における議長不信任と交代動議、委任状の有効性などが争われた裁判の判決が9月5日、東京地裁であった。浅川裁判官は、「総会の議長は理事長が務める」旨の規定が管理規約にあったとしても「総会の決議で規約と異なる決定をすることも排除されない」などとし、議長不信任・交代動議は適法だったと認定。動議に基づく決議も成立したと結論付けた。

役員選任を巡る動きと総会の流れ

2021年2月末 管理規約上の総会開催期限だったが執行部側はコロナ禍を理由に延期

2021年6月~9月 原告ら住民有志のうち7人が役員への立候補を決め、それぞれ執行部側に通知。正式な通知前から、次期総会で信任を得るべく独自に書式を定めた委任状を作成し、住民から委任状を集める。

2021年10月 11月の総会開催が決まり議案書が送付される。議案書には立候補があった旨は記載されたが氏名・人数は未記載。現役員で構成する、理事会が推薦する役員候補のみ氏名が記載された。

2021年11月5日 総会前日、マンション掲示板に立候補の事実を張り出し。

2021年11月6日 総会当日議事が進行する中、住民有志が、自ら集めた委任状の票数(議決権数)が不正確だと指摘し再集計を行う。再集計を4回行った後、確定。当日出席者の議決権行使を踏まえると有志の議決権数が執行部側を上回る計算に

・票数確定後、議長が議事進行を停止、役員改選議案を採決せず総会を終了させる意向を示す。

・議事進行を求めたところ、議長を理事長に交代するとして理事長も受諾。

・交代した理事長も「委任状の票数に疑義がある」などとして議事進行せず。

・原告が「議長不信任・交代動議」を申し入れ。議長が動議を議場に諮らなかったため、原告が理事長  

 に代わり動議を議場にはかる。賛成多数で決議されたとし、原告が議長を務めることに。

・原告が議長となり役員選任について決議。理事会推薦の候補と住民有志が立てた立候補者どちらに賛

 成するか採決した結果、住民有志が過半数を得る。採決方法は委任状と挙手。

浅川裁判官は、まず動議は「議長としての適格性を問うという性質上、権利の濫用に当たるなどの合理性を欠いたものであることが明白でない限り、議場に諮る必要がある」と言及。元理事長が議長として原告の動議を議場に諮らなかったのは、裁量権を逸脱した行為だと認定した。

     R5/9/5 東京地裁   マンション管理新聞第1254号より、引用抜粋

私見:かなり生々しいやり取りがあったように思えるが、通常、総会で審議できるのは予め総会議案として事前に組合員に配布されている総会議案書に記載された内容だけである。なぜならば、総会議案に対して組合員には、熟慮する時間が担保されるからである。それに対して動議は、組合員にとって予期せぬ出来事であり、想定外の事である。今回、申し入れられた「議長不信任・交代動議」が議場に諮られるべきであったかどうかは分からないが、総会は、組合員の問題解決の場でもあり、総会の秩序や一部の組合員の利益のためになされる動議でない限り、自由に議論すべきであると考える。管理規約はマンション内で遵守すべき大切な規範であるが、主人公はあくまで組合員であることを忘れないで欲しい。