刺青のある区分所有者は共用施設の利用を制限される場合がある!?

マンションの判例,管理組合関連

本件マンションの共用部分が区分所有者の共用に属する場合は、区分所有法12条により、民法249条以下の規定が排除され、区分所有者団体を前提として、その集会の決議や規約に制約された権利に変容されている。そして、使用方法は、使用細則、規約及び集会の決議により定められるので区分所有者はそれに従わなくてはならない。

規約や使用細則の改定変更は、全ての区分所有者を拘束するし、且つ、規約等は区分所有者間の規範であるから、例外規定を設けない限り、従前から区分所有者に及ぶことや遡及効があることも明白である。

したがって、原告が本件管理規約の改正により、事実上、共用部分の利用が制限されたとしても、直ちに、本件管理規約の改正が違法となるものではない。この点、原告は、被告が原告の利用を拒否する目的で、本件臨時総会を開催し、本件管理規約を改正したものであること、刺青をする理由は人それぞれであって、ファッションとして考えることもできるし、暴力団と結びつけることは偏見以外の何物でもないことを主張する。しかし、区分所有者の間で原告の刺青などが原因で、共用部分のの利用を改めようということになり、本件管理規約の改正に至ったものである・・・・略・・本件マンションの立地条件や周辺環境から反社会的勢力・・・・・・略・・・警察署からも暴力団排除の指導を受けていたことと・・複数の刺青をした男女が確認されている事などを踏まえて・略・・本件臨時総会の提案であってことさら原告だけを排除する意図でなされた決議であるとまでは認められない。また、日本文化の中では、刺青は単なるファッションではなく・略・・反社会勢力との関係を疑い、・略・・著しい畏怖間、嫌悪感を抱く者がいることが容易に想像できる。

人は生まれながらに刺青をしているわけでなく、其の後の人生の中で自らの意思で刺青を施すものであるから,刺青をする者は、其の後の人生の中で刺青をすることによりなされる社会的差別を受忍する義務があると言うべきである。

以上から、刺青の有無により区別を設ける本件管理規約の改正がなされたことを直ちに違法と認めることは出来ない。

原告は、本件マンションは、共用施設が自由に利用できることが宣伝文句となって売り出されたものであって、購入者において、その共用施設の利用が大幅に制限されることは他の入居者と比較して極めて不平等であると主張している。しかし、上記宣伝文句の中で、各施設利用については管理規約・使用細則による利用の定めがあることが記載されており、原告は、本件建物の購入の際には確かに刺青の有無の記載がないことを確認しているが、其の後、300世帯を超える区分所有者の中には刺青に嫌悪感を抱くものが少なからず存在し、刺青の差別社会の中で生活してきた原告において、将来的には管理規約や使用細則の改正等があり得るのを予見できたはずものであることから、本件管理規約の改正により、事実上、原告の使用が制限されるとしても、直ちに本件管理規約の改正が違法となるものではない。

    H23/8/23 東京地裁  ダイエックス出版「マンションのトラブル解決法」より引用

私見:一部の区分所有者の権利に特別の影響がある場合のルール改正は、その影響を受ける区分所有者の承諾を要する(区分所有法31条)とあるが今回の場合は、規約変更の合理性と必要性を比較衡量しても区分所有者の受忍限度を超えているとの判断で頷ける。