管理会社・理事長VS監事の対立
本件は、本マンションの区分所有者であり、本件マンションの管理組合の監事である原告が、被告らの行為により、原告の監査業務が妨害されるとともに原告の信用が毀損されたと主張して、不法行為に基づき、580万円+遅延損害金の連帯支払いを求めた事案である。
原告(監事)は、原告が被告会社(管理会社)と連絡が取れていたから、被告らは、原告に対し、平成27年度監査報告書に記名押印するよう依頼すれば足りるのに、それをせずに、H社に監査報告書を作成させて、平成27年度の事業計画及び収支決算を通そうとし、故意に原告の監査業務を妨害したと主張する。しかしながら、本件マンションの管理規約の37条1項によれば、本件管理組合の監事は、管理組合の業務の状況及び財産の状況を監査し、その結果を総会に報告しなければならないとされているのであるから、原告は、監査業務を行う意思があるのであれば、開催の通知を受けた理事会に出席すれば足りるところ、2回にわたって理事会を欠席したことは前述のとおりである。そして定期総会議案説明書の第2号議案には、副理事長が代行して監査結果を報告することに続けて、「なお、正式には、第8号議案で選任が予定されている管理組合の役員の中から決定される監事に監査していただき、後刻、改めて書面にて結果を報告いたします。」と記載されていることからすれば、平成27年度監査報告の監事欄に副理事長のH社が記名押印を代行したからといって、本件管理組合が平成27年度の監査を終了した扱いにしようとしたわけではなく、H社による記名押印の代行は、予定された期日(平成28年5月9日)に定期総会を開催するために形式を整えただけのいわば緊急避難的な行為と認めるのが相当である。よって、被告らが原告を排除して平成27年度の事業計画及び収支決算を通そうとしたと評価することはできず、本件記録上、原告の監査業務を妨害したと認めるに足りる証拠はないから、原告の主張に理由がない。
H29.3.29 横浜地裁川崎支部