59条の競売の実行!

マンションの判例

当事者

原告 X管理組合管理者 X1
被告 Y

主文

1原告は,被告が有する別紙物件目録記載の専有部分に係る区分所有権及び敷地利用権について競売を申し立てることができる。
2訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由

第1 請求
 主文と同旨
第2 事案の概要等
1 本件は,×区×丁目×番×号(登記上の所在地は×区×丁目×番地××)所在のマンション(以下「本件マンション」という。)の管理組合(以下「本件管理組合」という。)の管理者である原告が,本件マンションの〇〇〇号室の区分所有権及びその敷地利用権(以下,両者を併せて「被告区分所有権等」という。)を有する被告には本件管理組合に対する管理費及び修繕積立金(以下「管理費等」という。)の滞納があるとして,同滞納分を回収するため,建物の区分所有等に関する法律(以下「法」という。)59条1項に基づき被告区分所有権等の競売を請求する事案である。
2 前提事実(当事者間に争いがない事実又は証拠若しくは弁論の全趣旨により容易に認定できる事実
(1)当事者等(弁論の全趣旨)
ア(ア)管理者は区分所有者のために原告になることができるところ(法26条4項),原告は本件管理組合の理事長であり,管理者である(甲5,甲10〔38条2項〕)。
(イ)本件管理組合の第38期定時総会(平成28年8月21日開催)では,法59条1項に基づき被告区分所有権等の競売の請求をすることが議案とされ,同議案は区分所有者及び議決権の各4分の3以上の承認(法59条2項,58条2項)をもって議決された(甲5,弁論の全趣旨)。
 そこで,原告は,本件マンションの区分所有者のために,本訴を提起した。
イ(ア)被告は被告区分所有権等を有している(当事者間に争いなし)。
(イ)被告は,平成29年2月9日,急性硬膜下血腫により路上で倒れているところを発見され,同日,Aセンターに搬送され,現在に至るまで,同センターにおいて入院加療中であり,意思の疎通が極めて困難な常況にある(裁判所に顕著な事実)。
 そこで,当裁判所は,被告には「法定代理人がない場合」(民訴法35条1項)に当たると認め,同年7月6日,被告に特別代理人を選任した。
(2)被告による管理費等の滞納等
ア 本件マンションの区分所有権者は,管理規約上,本件管理組合に対し,管理規約所定の管理費等を毎月支払う義務を負っており(当事者間に争いなし),これらの支払義務を懈怠したときには,年利14.6パーセントの割合による遅延損害金を支払う義務を負っている(甲3〔55条3項〕,甲10〔60条4項〕,弁論の全趣旨)。
イ 被告が平成19年3月31日以降に支払義務を負っている管理費の月額は9820円,修繕積立金の月額は7340円であるところ(甲10〔24頁,29頁〕,弁論の全趣旨),被告は,平成29年1月26日時点で,別紙滞納管理費等一覧表記載のとおり,滞納管理費等及びこれに対する遅延損害金の各支払義務を負っていた。
(3)原告は,本訴訟の提起に先立ち,先取特権(法7条1項)に基づき被告区分所有権等について競売を申し立て、平成26年4月16日に担保不動産競売開始決定がされたが,被告区分所有権等に設定されていた根抵当権の被担保債務を考慮すると無剰余になるとして,同年9月10日に同競売開始決定は取り消された(甲8,9,弁論の全趣旨)。
第3 当事者の主張及び裁判所の判断
1 当事者の主張
(原告の主張)
(1)被告による未払額は管理費等の元本分だけで200万円を超えており,本件マンションの修繕計画に支障を生じさせているほか,これを放置すれば,他の区分所有者による滞納を誘発することにもなりかねない。そのため,被告による管理費等の滞納は「区分所有者の共同の利益に反する行為」(法59条1項,57条1項,6条1項)に当たり,これによって本件マンションの管理等に重大な悪影響が生じ,「区分所有者の共同生活の障害が著し」い(法59条1項)。 
(2)被告が管理費等の滞納を任意に解消することは見込めない。また,被告の資産や収入の状況は不明であるため,債権差押え等の方法により滞納管理費等を回収することは極めて困難であるし,被告区分所有権等には根抵当権が設定されているため,本件管理組合が被告の滞納管理費等について有している債務名義や先取特権に基づき被告区分所有権等について競売を申し立てて競売開始決定がされても,無剰余取消しとなることが見込まれる。そのため,法59条1項の競売以外の「他の方法によってはその障害を除去して・・・区分所有者の共同生活の維持を図ることは困難」(法59条1項)である。
(3)本件管理組合の第38期定時総会では,法59条1項に基づく被告区分所有権等の競売の請求をすることの承認決議をするに当たり,被告に弁明の機会を与えている。
(被告の主張)
(1)被告が管理費等を滞納していることから他の区分所有者がどのような不利益を受けるのか不明である。そのため,被告による管理費等の滞納が「共同の利益に反する行為」(法59条1項,57条1項,6条1項)であるだとか,それによって「区分所有者の共同生活上の障害が著し」い(法59条1項)とはいえない。
(2)被告区分所有権等の剰余価値は不明であるから,本件管理組合が被告の滞納管理費等について有している債務名義や先取特権に基づき被告区分所有権等について競売を申し立てることにより,被告による滞納額をどの程度回収できるか不明である。そのため,法59条1項の競売以外の「他の方法によってはその障害を除去して・・・区分所有者の共同生活の維持を図ることは困難」(法59条1項)とはいえない。
(3)法59条1項に基づく被告区分所有権等の競売の請求をすることの承認決議に当たり,本件管理組合が被告に弁明の機会を与えたとの主張は争う。
2 裁判所の判断
(1)本件マンションの区分所有者が本件管理組合に対して支払義務を負う管理費等は,本件マンションの管理,修繕,建替え等に要する経費に充当されるべきものであるため(甲10〔24条,27条〕),これらの管理費等を滞納することは,本件マンションの管理に関し「区分所有者の共同の利益に反する行為」(法59条1項,57条項,6条1項)といえる。
 そして,被告による管理費等の滞納は原告が特定する範囲だけでも約10年の長期間にわたっており,その額は元本だけでも201万5880円(元利合計では346万6501円)に上っていることからすると(前記第2.2(2)),被告による管理費等の滞納により,「区分所有者の共同生活上の障害が著し」い(法59条1項)といえる。
(2)被告区分所有権等の時価や被告区分所有権等に設定されている抵当権の被担保債権の現時点での残額は不明であるが,平成26年9月の時点では,先取特権(法7条1項)に基づく被告区分所有権等の担保不動産競売の開始決定は無剰余で取り消されていること(前記第2.2(3)),被告による管理費等の滞納はその後も続いており(前記第2.2(2)),被告の資力が回復したような事情は窺われないことなどからすると,現時点において,被告区分所有権等につき通常の強制競売又は担保不動産競売を申し立てて競売開始決定を得ても,無剰余取消しとなることが見込まれる。また,被告による管理費等の滞納が自主的に解消される見込みはなく,被告区分所有権等のほかにみるべき被告の資産はない(弁論の全趣旨)。
 したがって,法59条1項に基づく被告区分所有権等の競売以外の「他の方法によってはその障害を除去して・・・区分所有者の共同生活の維持を図ることは困難」である(法59条1項)といえる。
(3)本件管理組合の第38期定時総会の議事録(甲5)によれば,被告は,被告区分所有権等の競売の議決に際し弁明をしていないが,それ以前に,そもそも同総会に欠席していたことが認められる。
 しかし,本件管理組合では,管理規約上,総会開催日の2週間前までに,組合員である区分所有者に対し,会議の日時,場所及び目的を示すこととされており(甲10〔29条,43条1項ないし3項〕),本件請求に係る議案(第2号議案)についても,被告を含む本件マンションの区分所有権者らに対し,管理規約に基づく事前の通知がされていたものと推認されるところ,本件では同推認の妨げとなるような特段の事情は窺われない。
 したがって,被告に対し,被告区分所有権等の競売の議決に当たって必要とされる弁明の機会の付与(法59条2項,58条3項)はされていたというべきである。
(4)以上により,本件請求は法59条1項及び2項所定の要件をすべて満たすものといえる。
第4 結論
 よって,原告の請求は理由があるからこれを認容し,訴訟費用の負担については民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第18部
裁判官 依田吉人

                2017/10/31

私見:管理費等の未払いが10年に渡り、管理組合の運営に支障をきたしている。このマンションだけの問題でなく類似の問題を抱えるマンションは多い。管理組合の収入は、管理費等を基軸とする駐車場料金などの使用料しかない。赤信号みんなでわたれば怖くないの気質がまかり通ってしまえば管理組合は破綻する。至極、当たり前の判決で原告の方に軍配をあげざるを得ない。