一筆の土地上に未分譲棟の存在、団地関係どうなる??
9棟の区分所有建物で構成される一団地において、区分所有建物が、完成に伴い順次分譲される場合、未分譲棟の敷地について団地関係が成立するか否かが問題になった。団地管理組合が分譲業者に対して、未分譲棟の管理費等の支払いを求めた。既分譲棟のにおける区分所有者と未分譲棟のにおける分譲業者は、土地の利用状況が異なるため、団地関係の成立は認められないと判示した。
複数の区分所有建物で構成される一団地において、住宅都市整備事業(以下、「J」と称する)は、6階建てから13階建てのマンション9棟(総戸数390)を建築して順次分譲した。1~7号棟の分譲が終了し、8~9号棟については、内装工事が未施工であるために、未分譲となっていた。Jは、未分譲棟については、団地内建物の区分所有者ではないとして、管理費等の支払い義務を果たしていなかった。団地管理組合Xが、既に分譲された1~7号棟の区分所有者Aの要望を受けて、Jに対して未分譲棟等の管理費等の支払いを求めた。Jは、1号棟から5号棟を4回に分けて分譲した。6号棟から9号棟に関しては、ユニバーシアード組織委員会の役員及び選手等の宿舎として使用した後、6号棟及び7号棟には内装工事を施して分譲した。8号棟及び9号棟には内装工事が施されず、分譲が開始されていない。XとJは、平成7年7月1日以降、団地建物所有者として、敷地及び附属施設を共有している。1号棟から7号棟には売れ残った住戸があるが、Jは、総会において議決権を行使し、管理費等のの支払い義務を果たしている。
Xは、Jに対して次の通り主張した。①敷地を共有しているので、Jは、団地建物所有者であり、団地における共有関係が成立する。Jは、未分譲棟に関してもXに管理費等を納入すべき義務がある。②未分譲棟の販売は、終期が明らかではない為、Xの運営の収支に影響を及ぼす。Jには、8号棟及び9号棟の124戸について月額合計1,897,200円の滞納管理費等が存する。③平成9年2月から平成11年1月までの滞納管理費等45,532,800円及び遅延損害金を請求する。Jは、Xに対して次の通り主張した。①全棟の建築が完了し、分譲が終了するまでは、敷地を共有するという要件を実質的には充足しないので、団地関係は成立しない。④未分譲棟の敷地については、規約の定め又は集会の決議等に意思決定を行い得る状況になく、Xの運営に関して利害関係を共通にしていない。
判決要旨
Xの控棄却。Jには、管理費等の支払い義務はない。①未分譲棟は、既分譲棟と同様にすべて一筆の土地上にある。外形的に建物として完成し、Jが建物所有権を取得した以上、団地建物所有者の一員となる。建物完成と同時に、団地関係が成立し、規約の受けると解される余地もある。②65条による団体の成立は、利害関係を共通にする事項の管理について、団地建物所有者全員を構成員とする団体の意思によって決定し、実行することを目的とする。③一筆の土地上に9号のマンションが建設される場合、既分譲棟と未分譲棟では、土地の利用状況に大きな隔たりがある。既分譲棟ではA又はXが利用するのに対して、未分譲棟ではJが工事専用に利用する。Jは、敷地の一部を建設工事等の為に専用使用することを承諾する旨の書面の交付を区分所有者から受けている。④AとJは、未分譲棟の敷地については、利害関係を共通にするとはいえない。各棟の建築が完了し分譲が開始されるまでは、敷地を共有するという要件を実質的に充足しないので、団地関係は成立しない。Jの支払い義務は否定される。
H15/2/13 福岡高裁
出る出る受験判例160選より、抜粋
私見:未分譲棟の扱いについては、物理的には、団地関係は成立するが、工事中の未分譲棟については、実質的には、団地関係は成立しない、利用状況に違いが有りすぎるからとの考え。賛否もあると思うが法律の解釈がこうだと、と受け止めるしかないのでは。