修繕積立金の返還請求は出来る?

マンションの判例

マンション管理組合法人Yが、定期総会において、「管理費減額について」を議題として審議し、決議が行われました。議題には、修繕積立金に関する審議事項の記載はありませんでした。しかし、その総会議事録には「審議事項 管理費削減について」の項に「管理費減額改定案及び平成11年度から同21年度の修繕積立金返済案を2ヵ月以内に作成する。詳細は理事会に一任する事及び場合により臨時総会を開催することで承認された。」と記載されていました。その後、組合員に対し「修繕積立金返済及び管理費改定のお知らせ」と題する書面が送付されましたが、その書面に「定期総会において、修繕積立金を組合員皆様に返還されることが決議されました。」旨が記載されていたことから、組合員Xが、決議無効確認請求の訴訟を提起した事案。

Xは、管理規約の修繕積立金取崩しに関する規定に違反するから決議(以下「本件決議」という。)は無効である、また、本件通知に、修繕積立金の返還は議題として記載されておらず、本件総会の招集手続に重大な瑕疵が存在するから、本件決議は無効又は不存在であると主張しました。

裁判所は、本件決議の内容は、管理規約に違反すると認められるため、本件決議は無効である、と判断。 その判断において、検討された主な内容は、以下の3点。

  1. ①本件決議は修繕積立金の一部を組合員に返還するという内容であるから、管理規約にいう修繕積立金の取崩しを定めたものということができる。本件決議が修繕積立金の減額の性質を有するとしても、そのことでこれが修繕積立金の取崩しに該当しなくなるわけではない。
  2. ②管理規約の修繕積立金取崩しに関する定めの目的は、修繕積立金の使途をマンションの修繕等に限定することで管理費との混合を防ぎ、みだりに修繕積立金から散逸することを防ぐことにある。
  3. ③本件決議による修繕積立金の取崩しは、これまでに積立てられてきた修繕積立金をYの組合員に返還するものであって、Yが出捐※した何らかの費用に対し、これを穴埋めするという性質を有さない。したがって、本件決議による修繕積立金の取崩しは、経費の充当に該当せず、管理規約の修繕積立金取崩し事由に規定する要件を満たさない

マンション標準管理規約第60条第5項では、「組合員は、納付した管理費等及び使用料について、その返還請求又は分割請求をすることができない。」と規定。この定めは、管理組合会計を安定なものとし、修繕計画に支障をきたさないようにするためのもの、法律的にも、管理費等は組合員に総有的又は合有的に帰属していることを明らかにした規定である。

                          H23/4/26 東京地裁

                  篠原みち子先生のマンション管理お役立ちコーナーからの引用