管理規約で明文化されていない理事会規則は無効?!
X1株式会社、X2株式会社、X3,X4,X5は、Aビル(大型商業ビル)の区分所有者であり、Y1管理組合は、Aの管理組合であり、Y2は、管理者であったところ、理事会規則には、理事が管理組合に対して原告又は被告になったときは、理事の資格を失うむねの規定があり、管理規約には、管理規約又は集会の決議に著しく違反する行為があると認められる区分所有者について予め理事会の決議があった場合は、当該区分所有者を役員にすることができない、管理規約30条ないし30条の3のほか、役員、理事会について必要な事項は理事会において定めることができる旨の規定があり、Y1において特別高圧受変電設備改修工事(本件工事)につき区分所有者の集会の決議に基づき決議される等したことから、X1ないしX5がY1、Y2に対して理事会規則が公序良俗に反する等、無効、不存在である、本件工事の決議、施工、修繕積立金からの本件工事費用の支出が管理規約に違反する等と主張し、理事会規則の無効確認、本件工事の着工の差し止め、本件工事の工事費用の支出に係る集会決議の無効確認を請求した(X5は、死亡したため、相続人X6ないしX8が訴訟を承継した)。本件では、管理組合の理事の被選挙権に関する理事会規則の効力、管理規約の委任の有無、理事会規則の新設の際における理事会決議の効力等が問題になった。
第一審判決(大阪地裁判例H31/4/9判時2482.31)は、理事会規則は管理規約に基づく理事会の決議によって定められる理事会規則に委任されており、管理規約に違反しないことは明らかであるとし、其の後の事情によってX1らの専有部分については本件工事がされていないことなどから、理事会規則の無効確認、決議の無効確認請求に係る訴えを却下し、その余の請求を棄却したため、X1,X2,X4が控訴した。本判決は、管理規約においては原則として全ての区分所有者に理事となる被選挙権が与えられ、例外的に被選挙権が制限されることが定められており、この内容を超えて役員の資格喪失事由を定めることを理事会規則に委任する規定は存在しないし、理事の資格資格制限事由を理事会で決めるには管理規約による明文の委任が必要であるところ、管理規約にはそのような規定はなく、本件の理事会規則は管理規約による委任の範囲を逸脱した無効なものであるとし、理事会規則を新設した理事会の決議は無効であるなどとし、原判決中一部である請求棄却部分を取り消し、差し止め請求に係る訴えを却下し、理事会規則の無効確認請求を認容し、その余の請求を棄却し、その余の控訴を棄却した。
R1/10/3 大阪高裁
私見:この建物は、商業ビルで一般的な分譲マンションとは異なる。管理規約とは別に理事会規則なるものを定めている分譲マンションはあまり聞かない。しかし、商業施設と住居タイプの区分所有権が共存する複合タイプのマンションでは理事会規則を定めているマンションがはあるのかも知れない。ただ、その関係性は、細則と規約の関係に似て規約の変更や追加条項の定めは、総会にて区分所有者及び議決権の4分の3以上の決議が必要であるところ細則の変更や新設は、区分所有者の過半数及び議決権の過半数で可能なことからその優位性は明らかである。