専用使用権付庭に勝手に工作物はOK??

その他,マンションの判例,管理組合関連

(1)訴外A株式会社が本件マンションの専有部分を原被告ら他の区分所有者に売却するに際し、締結した各同様の売買契約書基本条項によれば「専用使用権の設定」として「パーキングスペース該当部分・・・・専用使用権の専用を認めるものとする。但し、定められた目的以外に使用してはならない。」と規定され、これを受けて同マンション細則には「専用使用権の認知」と題して「買主は売買物件のうち、パーキングスペース該当部分並びに1階建物専有部分付属の庭については、売主の指定する専用使用権者の専用を認めるものとする」と定められ、同第13条には「管理規約の遵守」として「買主は共用部分の使用等については、別紙「B共同管理規約」を遵守することを確約する」旨定められ、B共同管理規約によると、第8条には「専用使用」と題して「区分所有者全員は不動産売買契約書に基づき庭及びパーキングスペースについて専用使用権者の専用を認める。使用権者でない区分所有者は無断でこれを使用してはならない。旨、また、同第10条には、「共用、共有部分の現状変更又は処分」と題して「共用部分の変更は共有者全員の同意を必要とする。但し、共用部分の改良を目的とし、かつ著しく多額の費用を要しないものは、共有者全員の持分4分の3以上の多数で決することができる。以下省略」旨、更に同11条には「共用部分の損傷に対する責任」と題して「区分所有者が自己の責に帰すべき事由によって共用部分を損傷した時は、その補修費用の全部を負担しなければならない」旨、同12条には、「集会の承認を要する行為」と題して「区分所有者は、次の各号に掲げる行為をしようとするときは、集会における全員の承認を得なければならない。また、実施に際してはA株式会社に紹介しその意見を徴するものとする。1専用部分の外観及び構造物を変更すること。区分所有者全員は、これらの条項を承認して本件マンションの専用部分を購入したことが明らかであるからである。

(2)本件土地は、前記管理規約にいう共有部分で、その現状変更については共用部分の現状変更と同様共有者全員の同意を必要とすると解される。

(3)なお、被告らは当初からの本件マンション入居者ではなく、被告XがA株式会社の従業員で大阪より転勤して来たため本件マンション建築後2年・・・101号室を購入して入居するに至ったこと、ところが旧門扉は・・・外から内部が丸見えであり、・・・不用心である等の理由で昭和48年末頃から門扉の改造をしたい意向を漏らしていた・・・・・昭和49年7月の臨時管理集会に提案したところ、共有者全員の賛成が得られず提案は否決された・・・遂に昭和50年、本件土地の一部にコンクリートをベタ打ちして駐車場とし、車の出入りの為旧門扉を取壊して従前より立派な門扉を工作する改造工事を強行するに至った。

(4)以上の事実によると被告らの強行した駐車場築造工事は本件マンションの売買契約基本条項並びに管理規約8条、10条に違反するものとして被告らに旧に復すべき契約上の義務ありと言わざるを得ない。

 ア 被告らは上工事は売買契約の上条項に違反することはあっても、管理規約8条違反として他の区分所有者に責を負うべきいわれはないし、使用目的の「変更」にもあたらないと主張するが、・・・・上主張は当を得ていないと言わねばならない。

 イ また、被告らは前記工事は共用部分の現状変更にはなっても管理規約10条にいう共有者全員の同意を要する現状変更にはあたらないし、専用使用権の範囲内における改良工事であってと主張するが、・・・管理規約12条には専用部分の外観の変更には管理集会における全員の承認を要する旨規定されている・・・・上主張もまた失当と言わざるを得ない。

 ウ 被告らが執拗に前記工事の正当性を主張する背景には・・門扉を作ることは誰にも迷惑をかけないし、立派な門扉を作ることは共有者全員の利益である・・・莫大な利益がある・・等、被告らの納得し難いとする面も一概に否定し去ることのできない面がないわけではない。しかし、本件マンションのみならず一般に高層住宅とは・・・共同住宅であるから居住者一人の利便の為、勝手に・・・共同生活全体の秩序が維持できないことは見易い道理であり・・・・売買契約、管理規約に規定が置かれているのは、共同生活の秩序の維持に主たる目的が置かれているものと解され入居者は・・・これに従う義務があることは言うまでもない。

従って、前記工事を強行した被告らは規約違反の責を免れず、現状回復の義務を負うとする以外にない。

    S53/2/1 東京地裁  マンショントラブル解決法より、参考

私見:ベランダを含め、専用使用権のあるスペースの利用法にあたってはとかくトラブルの発生事案が多い。ルーフバルコニーにサニタリールームを築造したケースもあり、戸建て感覚で暮らしてもらっては困る。本件のように集会で否決されたにもかかわらず強行に工事を行うとは私からするとその神経は理解できない。どうせやるのであれば法的に手続きを進めた後、裁判所からお墨付きをもらった後(残念ながら今回は敗訴であったが)でやれば良かったのではと思う。原状回復の費用と応訴した時の裁判費用のダブルは痛い。もっと痛いのは、被告らに好意的な方もおられただろうし、マンション内での其の後の人間関係だろう。