マンション分譲業者の説明義務?!

その他,マンションの判例,管理組合関連

1 被控訴人は、不動産売買に関する専門的知識を有する株式会社であり、控訴人は、不動産売買に関する専門的知識を有しない一般消費者であるから、被控訴人としては、控訴人に対し、売却物件であるAないし本件建物の日照・通風等に関し、正確な情報を提供する義務があり、誤った情報を提供して本件建物の購入・不購入の判断を誤らせないようにする信義則上の義務があると言うべきである。

2 南側隣地は、大蔵省が相続税の物納により所有権を取得した土地であり、大蔵省から何らかの用途に供する目的で取得した土地ではないから、不動産売買に関する専門的知識を有し、右経過を知っていた被控訴人としては、南側隣地から横浜駅から至近距離にあるという立地条件と相俟って、大蔵省において、早晩これを換金処分し、その購入者がその土地上に中高層マンション等の建物を建築する可能性があることやマンション等の建築によって本件建物の日照・通風等が阻害されることがあることを当然予想できたと言うべきであるから、Aの販売にあたり、その旨営業社員に周知徹底し、営業社員をして、右のような可能性があることを控訴人らの顧客に告知すべき義務があったと言うべきである。

3 しかるに、被控訴人は、営業社員に対し、右のような可能性があることを周知徹底させず、そのため、被控訴人の担当者は、個人的な見解と断りながらも南側隣地の所有者が大蔵省でなので、しばらくは何も建たないし、建物が建てられるにしても変なものは建たないはずである旨説明し、控訴人をして、南側隣地に建物が建築されることはなく、本件建物の日照が確保される旨の期待を持たせて本件建物の購入を勧誘し、控訴人をして本件建物を購入させたものであるから、被控訴人には、右告知義務違反の債務不履行があったと認められる。

結論・債務不履行

4 控訴人は、本件売買契約を締結するか否かを決する上で、将来南側隣地に中高層建物が建築され、これによって本件建物の日照、通風等の住宅条件が劣悪化する可能性がある旨の説明を受けていれば、本件売買契約を締結することはなかったと認められるから、被控訴人は、控訴人に対し、右告知義務違反の債務不履行に基づき、本件手付金430万円を没収されたことによる損害の賠償を求めることができると言うべきである。

過失相殺の当否

5 控訴人は、本件売買契約書及び本件重要事項説明書において、「本物件周辺の現在空き地となっている用地については、将来、所有者の都合その他により建築基準法その他の法令の許可を得て、中高層建物等が建築される場合があり、これに伴う日照等の環境変化が生じること」が明記されていた上、控訴人自身Aを実際に見分しているのであるから、近い将来において、南側隣地にAと同程度の中高層建物が建築されることを予測できたと言うべきところ、控訴人は被控訴人の担当者の個人的見解に盲従して、相当長期間、南側隣地にAと同程度の建築物は建築されないと誤信し本件売買契約を締結した上、被控訴人から、本件売買契約の解約の機会を与えられながら、最終金の支払期日まで本件売買契約の解約申し入れをせず、本件手付金を没収された過失があるから、控訴人の損害額の算定にあたっては右過失を考慮すべきである。そして、控訴人の過失割合は、50パーセントであると認められる。

結論・過失相殺について

6 したがって、右割合により過失相殺すると、控訴人が被控訴人に対し損害賠償を求めることができる額は、215万円(本件手付金相当額430万円×{1-0.5}=215万円)となる。

      H11/9/8 東京高裁      ダイエックス出版 マンションのトラブル解決法より引用